レトロ風グラビアが止まらない - フィルム風・80年代テイストの魅力

ここ数年、グラビアの世界で明らかに一つの潮流がある。フィルムカメラで撮ったような粒子感のある画質、80年代を思わせるハイレグ水着、ネオンカラーのスタイリング。「レトロ風」と一括りにされがちだが、実はいくつかの全く異なる流れが合流してできた現象だ。一個ずつ解きほぐしてみたい。

「きれいすぎる」への反動

デジタル写真の高精細化が極限まで進んだ。最新のカメラで撮れば毛穴まで見えるレベルの解像度。レタッチ技術も進化して、肌をなめらかに、色を鮮やかに、いくらでも「きれいに」できるようになった。

その結果、何が起きたか。「きれいすぎてつまらない」という感覚が生まれた。全部の写真が同じトーンで、同じ質感で、同じように「完璧」。個性がない。味がない。だったら、あえて画質を落として「不完全さ」を取り入れてみよう。これがレトロ風グラビアの出発点だ。

フィルムライクの技法

実際にフィルムカメラで撮影している写真家もいるが、多くの場合はデジタルで撮った後に「フィルム風」の加工をかけている。具体的には以下のような処理だ。

フィルム風加工の代表的手法

  • 粒子(グレイン)追加 — 画面に細かいノイズを乗せて、デジタルの「ツルッと感」を消す
  • 彩度の抑制 — 原色を出さず、少しくすんだ色味にする
  • ハイライトの飛ばし — 明るい部分を白飛びさせて、フィルム特有の「抜け感」を演出
  • シャドウの浮かし — 暗部を真っ黒にせず、少し灰色を残す
  • 色被り — 全体にわずかに緑やオレンジを乗せる。フィルムの銘柄によるクセの再現

この加工をするだけで、同じ写真が全く違う雰囲気になる。デジタルの冷たさが消えて、手触り感のある暖かい印象に変わる。SNSの写真加工アプリでもこの手のフィルターは大人気で、グラビアに限らず写真文化全体のトレンドとも言える。

80年代リバイバル — ハイレグとネオン

フィルム風とは別の文脈で、80年代のグラビアスタイルそのものを復刻する動きもある。特に象徴的なのがハイレグ水着の復活だ。

80年代のグラビアアイドルといえばハイレグ水着。脚の付け根が大胆に開いたカッティングは、当時のグラビアの象徴だった。2010年代にはほぼ絶滅していたが、2020年代に入って若いグラビアアイドルが「あえて」着用するケースが増えた。

着る側にとっても「レトロだから」という言い訳(というか文脈)があることで、心理的なハードルが下がるのかもしれない。「攻めたデザインの水着」ではなく「レトロスタイルの再解釈」という位置づけなら、批判も受けにくい。

Y2K — 2000年代ノスタルジー

さらに最近はY2K(2000年代初頭)リバイバルの波も来ている。ローライズデニム、ストリングビキニ、ギャル文化の残り香。2000年代に10代だった世代が今30代になり、「あの頃」への郷愁がファッションにもグラビアにも影響を与えている。

80年代レトロと2000年代Y2Kは、ノスタルジーの対象年代が違うだけで構造は同じだ。「今にはない空気感」への渇望。デジタルで最適化された現代のグラビアに「かつての野生」を取り戻そうとする動き、と捉えてもいい。

「新しいものを作ろうとして過去に手を伸ばすのは、矛盾ではなく必然だ」。これは誰かの言葉ではなく自分の実感だ。最先端を走り続けると、どこかで原点に戻りたくなる。グラビアのレトロブームは、その「原点回帰本能」の表れだと思う。

レトロ風グラビアの楽しみ方

レトロ風グラビアを楽しむなら、できれば実際の80年代・90年代のグラビアも見比べてみてほしい。古書店やネットオークションで当時のグラビア誌が手に入る。比較すると「何が再現されていて、何が現代的にアップデートされているか」が分かって面白い。

モノクロームグラビアも「あえて情報を削る」という点でレトロ風と通底する美学がある。昭和から令和のグラビア史を知ると、今のレトロブームの位置づけがもっとクリアに見えてくるはずだ。温故知新。グラビアの世界でもその言葉は生きている。